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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)169号 判決 1950年7月11日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由は、末尾に添えた別紙記載の通りである。

一、上告理由第一点及び第二点について。

原審のなした証拠の取捨判断及び事実上の判断には、所論のような法則違反の点は認められない。又裁判所は、採用しない証拠につき、その採用しない理由を一々説明しなければならないものではない。よつて、論旨はすべて理由がない。

二、上告理由第三点について。

仮処分事件において、債権者主張の事実につき疏明がない場合でも、裁判所は、債権者に保証を立てさせて仮処分を命ずることができるけれども、右の場合に仮処分を命ずるか否かは、裁判所が自由裁量により決しうるところで、常に仮処分を命じなければならないものではない。本件にあつて、原審は、上告人の主張事実が疏明なく、かえつて被上告人の主張事実が疏明あり、かつ上告人に保証を立てさせて仮処分を命ずることは不適当と認めて、上告人の仮処分申請を却下したのであつて、その判断には何ら違法の点は認められない。論旨は、右と異る独自の見解に立ち原判決を非難するに過ぎないから、採用に値しない。

三、上告理由第四点について、

論旨は、後述の乙第四号証に関する部分を除いては、結局原審が適法にした事実上の判断と異る事実を前提として原判決を非難するに過ぎず、適法な上告理由とはならない。

又乙第四号証に関する部分については、原判決は、右乙第四号証だけでなく、その他多くの書証人証を資料として、被上告人が上告人を本件家屋の奥三畳に居住させ無償使用させることを約すると共に、これにつき上告人等から右乙第四号証を徴した事実の疏明ありと認めたものであることは判文上明らかで、その判断には何ら違法の点は認められないから、この点の論旨も理由がない。

よつて、民事訴訟法第四〇一条、第九五条及び第八九条の規定に従い、主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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